理事長 | 長田 裕之 理研・環境資源科学研究センター・副センター長 |
2015年6月に開催された理事会で、宮園浩平・前理事長の後を受けて新理事長を拝命いたしました。どうぞよろしくお願いします。
20年ほど前から、がん特異的な標的分子およびその分子機構に関する研究成果に基づいて、様々な抗体医薬および小分子医薬が開発されて、分子標的治療が大きく進歩しました。そして、1993年より文部省がん重点研究の支援のもとに「癌化学療法の分子標的」ワークショップが3回にわたり開催され、いずれも盛会でありました。参加者の中から、分子標的治療に関する研究をさらに推進するための研究会の設立を望む声が高まりました。このような背景から、ワークショップの有志が集まり、1996年にがん分子標的治療研究会が誕生し、2008年から日本がん分子標的治療学会となりました。それ以来、鶴尾隆先生、曽根三郎先生、宮園浩平先生が理事長として、本学会の発展にご尽力されてきました。
私は、歴代理事長が目指してきた基礎と臨床の融合、産学共同の路線を継承するとともに、さらに分子標的治療研究を加速するため、本学会を研究者の情報交換の場、切磋琢磨できる場にしたいと思います。有望な分子標的の探索、新薬の開発、治療法の確立には、しっかりとした基礎研究を行い、研究結果を整理・精査して、臨床応用上の問題点を検討することが必須です。それには産官学で直接研究開発に携わっている研究者の緊密な連携が不可欠です。
分子標的治療研究を加速するために、次の3つの項目を実現して、社会からの期待に応える学会になるよう努力する所存です。
1. 基礎研究の充実と応用研究の加速
2. 学術集会、ワークショップの充実
3. 収支バランスが取れた健全な運営
すなわち、産官学のシーズとニーズを拾い上げて連携をさらに加速するとともに、トランスレーショナルリサーチの推進、グローバリゼーションの推進を図りたいと思います。学会の存在意義は、同じ研究分野に興味を持つ人が科学の楽しさを共有しながら、自分の研究を発展させるために、互いに切磋琢磨することにあると思いますので、学術集会と研究集会の充実を図るとともに、若手研究者の育成にも貢献したいと思います。
学会の運営に関しては、限られた収入で最大限の会員サービスを提供できるよう、学会の運営基盤を強化していきたいと思います。日本癌学会、日本臨床腫瘍学会と連携しつつ、社会および患者の負託にこたえ得る学会として、本学会独自の活動にも取り組みたいと思います。
1961年に、第35代アメリカ合衆国大統領に就任したJ.F. Kennedyは、就任演説で、「ask not what your country can do for you--ask what you can do for your country」と言っています。私自身は浅学菲才の身ではありますが、本学会の発展をめざし責務の遂行に全力を傾注いたしますので、会員の皆様におかれましてはご協力ご支援のほど、よろしくお願いいたします。
(平成27年6月)