学術集会・セミナー

理事長あいさつ

理事長   木村 晋也
  佐賀大学医学部内科学講座 血液・呼吸器・腫瘍内科
佐賀大学医学部創薬科学講座


この度、7代目の日本がん分子標的治療学会理事長を拝命いたしました。本学会は、分子標的薬という概念がまだ広く知られていなかった1996年に、鶴尾隆先生を中心に創設されたがん分子標的治療研究会を前身としています。そして、2008年に現在の日本がん分子標的治療学会となりました。歴代の理事長である鶴尾隆先生、曽根三郎先生、宮園浩平先生、長田裕之先生、中村祐輔先生、吉田稔先生のご尽力により、学会は大きく発展してまいりました。

私のライフワークである慢性骨髄性白血病では、2001年に分子標的薬メシル酸イマチニブが導入され、劇的に予後が改善しました。その後も数種類の薬剤が開発され、かつては数年以内にほぼ全員が亡くなっていた病気が、ほぼ死なない病気となり、さらに30%程度の患者さんにおいては完治も望めるようになりました。このように分子標的薬の効果は凄まじく、将来的には固形がんにおいても、手術をせず、飲み薬だけで完治する時代が訪れるかもしれません。いや、我々の研究によってその未来を実現させなくてはなりません。

このようなことを実現するために学会の更なる発展が不可欠です。理事長としての抱負を以下に述べます。まず、法人会員(ベンチャーを含む)を増やし、産学連携をより一層強化いたします。また、若い力は重要であり、学生会員の増加を目指します。学生会員にはトラベルアワードなどを設け、研究環境を整えることで支援してまいります。そして研究者と企業の橋渡しを行い、若手研究者のキャリア支援も強化します。多様性は組織の活性化に不可欠です。女性の理事や評議員、外国からの会員を増やしていきます。自動翻訳ツールの活用などで国際的な発表の場を整え、日本語の発表でも外国からの参加者が母国語で理解できる環境を提供できないかと考えています。任期中に達成することは難しいですが、本学会の英文誌創刊を視野に入れた検討も始めたいと思います。

これらの取り組みにより、日本から、そして本学会から、一つでも多くの新規がん分子標的治療薬が生まれることを願っております。実現には会員の皆様のご協力が不可欠です。微力ながら理事長としての任務に全力を尽くしてまいりますので、皆様のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

(令和6年6月)

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