学術集会・セミナー

理事長あいさつ

理事長   中村 祐輔
  (公財)がん研究会
がんプレシジョン医療研究センター


本学会は、平成9年に、鶴尾隆先生のご尽力によって誕生した、がん分子標的治療研究会の流れをくむもので、平成20年に日本がん分子標的治療学会となりました。理事長には、鶴尾隆先生、曽根三郎先生、宮園浩平先生、長田裕之先生が就任され、本学会の発展にご尽力されてきました。

 この二十数年の間、分子標的治療薬は、がん治療の場においてなくてはならないものとなりました。長い間、酵素や細胞表面受容体などのDruggableと分類されていた分子に対する治療薬が主流で、それ以外の分子は薬剤開発が難しいと考えられてきました。しかし、最近では、がん化を促進する分子を特異的に分解する低分子化合物の開発や、これらをmRNAやDNAレベルで制御するような分子標的治療薬などの開発が行われつつあります。したがって、このような従来はUndruggableと考えられていた分子に対する薬剤開発を推進していく必要性にも迫られています。私は歴代理事長の目指されてきた分子標的治療研究を継承するとともに、上記のような画期的で斬新な分子標的治療薬開発に向けて皆様の力を結集していきたいと考えております。日本の医薬品の輸入超過は、3年連続で2兆円を越えている状況であり、高額ながん分子標的治療薬の輸入は、日本の医療経済にも大きな影響を及ぼしています。日本という国の将来のために、そして、日本という国の誇りのためにも、日本発の画期的な医薬品開発を一緒になって推進していけることを願っております。

また、次世代を担う若手研究者の育成はきわめて重要かつ急務であり、それらについても尽力していきたいと考えております。本学会には、産官学の研究現場で活躍している会員が多数おられますので、有望な分子標的の探索、新薬の開発、治療法の確立に向けて、会員、特に若手会員が連携して日本発の創薬を進めていくことが出来るような機会を提供したいと考えております。

 欧米に伍して画期的な分子標的治療薬の研究・開発を推進していくためには、基礎と臨床、産と官と学、国内と海外などの連携が不可欠です。そのために、

  1. 産官学のシーズとニーズをマッチングさせて共同研究を推進する体制を強化する
  2. 基礎から臨床へのトランスレーショナルリサーチを支援できるような仕組みを構築する
  3. 国際的な連携が可能となる場を提供していく

ことに注力していきたいと考えております。

 学会の運営に関しては、収入の範囲内で最大限の会員サービスを提供できるよう、学会運営基盤を強化していきたいと思います。また、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会とも連携しつつ、社会の付託に応え、患者さんや家族に希望を提供できる学会としての活動にも取り組みたいと思います。それが、本学会の基盤を作られた鶴尾隆先生の志の継承につながると考えます。

 ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

(平成30年6月)

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