学術集会・セミナー

第1回総会(1997年)

会長 鶴 尾  隆 
東京大学分子細胞生物学研究所 

第1回がん分子標的治療研究会総会を平成9年6月6、7日、東京都渋谷区の日本薬学会長井記念館で行いました。

抗がん剤をはじめとする癌治療薬は、いわゆるランダムスクリーニングを中心として探索され、有効な物質が見出されてきました。この方向の探索に加え、最近、癌治療の分子標的を明確にし、その機能の解明を通して、機能を制?することによって癌治療に結びつけようとする研究動向が国際的にも明らかになりつつあります。私共の研究で言いますと、多剤耐性のP-糖蛋白質の機能解明から耐性克服薬へのアプローチがこれに相当し、P-糖蛋白質の研究はこの新しい研究動向に先鞭をつけるものでありました。この動向を我が国において定着させる目的で、過去3回文部省のがん重点研究の支援のもとにワークショップ「癌化学療法の分子標的」を行いました。いずれも盛会で、世界の動向と相俟ってこの動きを我が国において定着させることができたと考えております。

この研究の今後の更なる発展を意図し、独立の研究会として企画し、発足したのが今回の研究会です。今回はその第1回総会となったわけでありますが、550余名の会員、総計約300名の参加者を得、討論を重視した有益な会になりました。演題は一般公募によるもので、注目すべき分子標的として「癌遺伝子産物・シグナル伝達系・転写因子」、「DNA複製、修復」、「細胞周期」、「転移・浸潤」、「耐性因子、感受性因子」、「サイトカイン・分化」、「アポトーシス・細胞骨格」、「遺伝子治療」からなる8つのセッションを設けました。62題の口演をワークショップ形式にし、各セッションごとに討論を行いました。また、23題のポスターセッションでは、参加者各位が有意義な討論を重ねることができました。いずれのセッションも非常に盛況であり、得るところが多くありました。

研究会は毎年行う予定です。これからの研究会を通して臨床の場に持ち込めるような新しい化合物が創製されることを心より願っております。最後に本会誕生までに種々有益なご意見を頂きました癌研の菅野先生、北川先生、それに幹事、世話人の先生方、本会の運営について賛助を頂きました多くの企業に対し心よりお礼申し上げます。

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