第6回がん分子標的治療研究会総会 会長 新 津 洋 司 郎
札幌医科大学医学部内科学第四講座
会長講演の様子 |
この度第6回分子標的治療研究会総会をお世話させて頂くことになりました。
衆知のとおり、昨今の目覚ましい分子腫瘍学の進歩は癌細胞のgrowth advantageに関与する様々な分子を明らかにすると同時に、それらの分子を標的とした治療研究のうねりを引き起こしました。このうねりは半世紀以上に及ぶ抗癌剤研究の歴史から見ると極めて短期間であったにもかかわらず、結果として開発されたいくつかの薬剤については既に臨床での有効性が確認される程の急速な発展を見せております。このような時に本会の会長を仰せつかりましたことは大変光栄でありますとともに、責任を感じている次第であります。
今回の企画で心いたしましたことは、まず第一にボーダーレスになりつつある医薬界の現状を踏まえ、米国での研究動向に関する情報を会員が分かち合う機会をつくる事でありました。そのためにNCI Cancer Treatment and Diagnosis部門の長であるSausville博士に特別講演をお願い致しました。
次に昨夏のニセコワークショップの課題であったtranslational researchについての討論をさらに深めるために、今回もパネルディスカッション「TranslationalResearchの現状と方向性」を企画致しました。このワークショップでは可及的に本邦で行われた、あるいは行われている個々のリサーチについて具体的なdiscussionをお願いしたいと考えております。
第三の企画は、公募を主体としたシンポジウム「ゲノム医学の分子標的療法への応用」であります。ゲノム医学で得られた技術や知識は今や創薬に欠くべからざるものになっております。DNAarray、SNPS、ライボザイム、アンチセンス、デコイ、遺伝子治療等の技術を応用した分子標的医薬の探索研究について、是非積極的な応募をお願いしたいと考えております。
最後の企画である会長講演では、私共の教室で試みている大腸癌化学予防について、分子標的療法の視点から発表させて頂こうと考えております。米国では本年だけでも百数十に及ぶ化学予防によるトライアルが行われていますが、本邦ではこういった試みは皆無と言って良い程であります。研究会という規模の集まりで会長講演というのはいかにも不釣り合いであり,かなり躊躇致しましたが、あえて厚顔な企画をさせて頂きました。どうか問題提起としての意味合いが強いものとして御理解を頂きたいと存じます。
以上、若干欲張った企画となってしまいましたが、皆様の御協力で何とか成功に持って行きたいと考えておりますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
6月の北海道はまさにhigh seasonであります。多数の方の御参加を心からお待ち致しております。